子供のいない夫婦が養子縁組を行うケースがときどき見受けられます。養子縁組の要件等に関しては民法792条以下に規定があります。養子は縁組の日から実子として扱われます(民法809条)ので養子縁組があるかないかは遺産相続の時に問題となることがあります。
例えば、A男がB女と再婚しました。B女には前夫との間の子Cがいました。いわゆる連れ子です。他に子のないA男はCを可愛がりCもA男を実の父親の様に慕っていましたがある日事故でA男が亡くなってしまいました。この時遺産相続の権利はB女とA男の父母は既に死亡しているためA男の兄弟がもつことになり実子でないCにはその権利がありません。A男はCを自分の養子にしていなかったためです。再婚の場合、相手の連れ子を特別の理由がない限り自分の養子にしておかないとその子には実子としての法的権利がありませんので遺産相続などで不利益を被ることになる場合があります。
またこんな例があります。寝たきりのA男は亡くなった再婚相手のB女の連れ子Cと一つ屋根の下で生活し介護の一切をCが行ってくれていました。A男は自分が亡くなったら財産の全てをCに与えるつもりでいました。そしてA男が亡くなり葬式も済んだのですが、今まで付き合いのなかったA男の兄弟たちがCに家を出て行くように言いCは家から追い出され遺産も手にする事ができませんでした。A男がCを養子にするか遺言書を残すかしておかなかったために実子でないCにはA男の遺産相続の権利がなかったのです。A男が養子縁組か遺言書を残しておけばA男の財産は望み通りCのものになったのです。ただし、遺言書の場合は遺留分に注意が必要です。兄弟弟妹には遺留分がないのでこの例の場合は問題ありませんがそれ以外の相続人には遺留分があるので遺留分を侵害してまで遺産を特定の人に与えることはできません。注意が必要です。