今回は債権の時効についてです。時効には取得時効と消滅時効がありますが、債権の場合は消滅時効が問題となります。よく「飲み屋のツケは1年間請求がなければ時効によって消滅する」からそれまで払わないでおこうなどと冗談交じりに言ったりしますが、これは現行の民法には職業別の短期消滅時効の規定があるからです。この職業別短期消滅時効は民法170条から174条の規定により旅館・料理店・飲食店・飲食料・入場料などは1年、弁護士報酬・商品売却代金などは2年、医師・薬剤師などの報酬・工事代金などは3年間権利行使しなければ時効消滅して以後は請求ができなくなりました。それが今回の改正によりこの170条から174条の規定が削除されました。その結果債権の消滅時効は、(1)債権者が権利行使することを知った時(主観的起算点)から5年間、(2)権利行使することができる時(客観的起算点)から10年間のうち早い方のどちらかで債権の種類を問わず消滅時効が完成することになります。改正民法が施行となる2020年4月からは「飲み屋のツケ」が1年で消滅することはなくなりました。ただし不法行為による損害賠償請求権の消滅時効は、(1)被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間、(2)不法行為の時から20年間権利行使しない時という規定は変わりません。また人の生命又は身体を害する不法行為の場合は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年ではなく5年間に延長となります。