良子さんは夫の遺産相続で悩んでいます。最近夫を病気で亡くしたのですが夫とは10年前に再婚して子供はいません。夫には前妻との間に15歳になる子供がいて毎月養育費をその子が20歳になるまで支払う約束となっていて夫は今まで支払っていました。
遺産相続は、負債も含めて一切の権利義務を相続する事になるので(民法第896条)、良子さんは遺産相続に当たってその養育費の支払い義務も相続して今後も自分が払わねばならないのか悩んでいます。わが子ならまだしもいくら夫の子とはいえ血のつながらない見ず知らずの子の養育費を払い続ける事には納得がいかない様子です。
民法第896条には被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継するとありますが、続けて被相続人の一身に専属したものはこの限りでないと規定されています。養育費の支払い義務はこれに該当します。だから良子さんは支払う必要はありません。ただし、その子は夫の嫡出子なので遺産相続の権利があります。法定相続通りだと2分の1はその子が相続することになります(民法第900条)。
ここで問題となるのは、遺言書がない場合です。その子から相続の権利を主張され遺産の2分の1を要求されて渡すとなると今住んでいる家を売却して工面するしかありません。良子さんは住まいを失ってしまいます。こうした事が起きないように夫は生前に遺言書を作成しておくなどの相続対策を講じて妻が困らないように十分な手立てを行っておくべきでした。